企業の代表取締役が交通事故で受傷し、14級の後遺障害が残った事案で、代表取締役が受傷し稼働できなくなったことで生じた会社の損害について、一部認容した判決です。
交通事故によって会社の代表者が受傷し、二次的に会社に生じたいわゆる間接損害については、従来の裁判例は、会社と代表取締役の経済的一体性があるか否か、代替性があるか否かなどを判断要素として検討し、これらがなければ間接損害を認めないケースがほとんどでした。このような裁判例の傾向が機械的・硬直的であると批判されていた中で、本件では、かなり実質的な因果関係の有無を検討しました。
判決では、「原告と原告会社が経済的に一体で、原告会社の業務全てが原告以外の者による代替が効かないものとまではいえないものの、その重要な部分につき原告に依拠する状況にあった」、「原告の代替が即時につかないと考えられる相当期間…におけるⅰ受注状況を維持するために止む無く要することとなった損害、ⅱ営業上の損害については、原告会社の間接損害として、本件事故と相当因果関係のある損害とする余地がある」と判断しました。そして、判決では、事故後に発生した一部の外注費について、代表取締役の休業損害とは別に認定しました。
この裁判例は、令和3年8月12日発行の交通事故損害賠償分野の業界誌「自保ジャーナル」や、2022年版民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(いわゆる赤い本)に掲載されました。