交通事故の被害に遭い、治療をしてきたものの、完治せずに症状が残ってしまうことがあります。
これを後遺障害といい、自賠責保険に後遺障害の申請手続きをすることで、等級を認定してもらうことが可能になります。
後遺障害の等級は1級から14級まであり、等級に応じて賠償金は大きく変わってきます。
今回は、後遺障害認定を左右する後遺障害診断書の書き方(むち打ち症の方)について解説していきます。
なお、以下で解説する内容は、診断書の内容に誤りがあったり、形式面における不備があったりする場合に修正を提案するものです。医師に対し虚偽の記載を求めることはしないようにしましょう。
「自覚症状」がしっかりと記載されているか
過不足ないか
まずは、自覚症状がきちんと記載されているかどうかを確認しましょう。
例えば、むち打ちになって首や腰が痛いのであれば、頚部痛、腰部痛といった記載がされているのか、チェックします。
自賠責保険における後遺障害申請は、書類による審査となります。
自覚症状に記載のない症状は、審査の対象となりません。本当は腰も痛いのに、後遺障害診断書の自覚症状の蘭には「頚部痛」のみ記載されていると、腰部痛について認定を受けることはできません。医師にはきちんと残存症状を伝えましょう。
また、「症状」が記載される必要があるのに、日常生活における支障が記載されてしまう例があります。これは、症状と捉えにくいため、審査の対象とされない場合があります。
例えば、「階段を登りにくい」とか、「皿を落としてしまうことがある」などです。痛みによってそうなっているのか、麻痺や筋力低下でそうなっているのか、分かりにくいため、自賠責も判断に迷うことになってしまいます。
そうならないように、例えば「〇〇痛」、「右手しびれ」「右手関節可動域制限」など、具体的な症状を記載しましょう。
限定された記載になっていないか
むち打ちによる14級の神経症状が認定されるためには、常時痛であることが必要です。
例えば、「雨の日に痛みが出る」とか、「寒くなると痛い」だと、14級の神経症状は認定されません。
もちろん、事実、そうであればそのように記載すべきでしょうが、常に痛いのであれば、しっかりとそのことが自覚症状の欄に記載されるべきでしょう。
痛みの程度や出現時を記載するのではなく、単に、「〇〇痛」と記載することがベストと思われます。
自覚症状に合った「傷病名」が記載されているか
例えば、右肩が痛いにもかかわらず、傷病名には「腰部挫傷」のみ記載されている場合、右肩については症状が残っていても後遺障害認定を受けられる可能性は低くなります。
そのため、症状にあった傷病名がきちんと記載されているのか確認しましょう。不足があれば、必ず追記などを医師に求めましょう。
「症状固定日」が適切に記載されているか
十分に治療をしたものの、症状が残存し、改善の見込みが無くなった状態を症状固定といいます。
症状固定日がいつなのかは、自賠責保険では重要視されます。
しっかり通院していないにもかかわらず、痛みが残ったとして後遺障害診断書を書き、後遺障害申請をしても、自賠責保険は後遺障害を認定しません。
例えば受傷後1か月程度で後遺障害診断書を書いても、痛みが残存しているのは当然ですから、自賠責保険としても将来に渡って痛みなどが残存するとの判断はできません。
むち打ちで後遺障害認定を受けているケースでは、概ね半年程度の治療期間で認定を受けていることが多いです。
傷病名によっては2、3か月でも後遺障害認定を受けられるものもありますが、頚椎捻挫や腰椎捻挫など、いわゆるむち打ち症の場合、半年程度は治療をしたうえで症状固定をむかえるようにしましょう。
「①他覚症状及び検査結果 精神・神経の障害」の欄がしっかり記載されているか
ここは、痛みなどの症状を裏付ける検査結果などが記載されます。一般的に、症状が外傷による症状であることが明らかであり、その旨の客観的な根拠(画像所見など)がある場合には「他覚的所見がある」といいます。
むち打ちの場合、外傷による画像所見が明らかになるケースは稀で、殆どが外傷性変化なし、ということになるでしょう。
しかし、ここで重要なのは、何らかの所見があれば、しっかりと書いてもらうことです。外傷による所見がないものの、経年性変化(年齢による変化)がある場合には、そのことをしっかりと書いてもらいましょう。
これは、むち打ちで後遺障害認定を受けるためには、「将来も長期にわたって症状が残存するだろう」といえることが必要だからです。
経年性の画像所見であっても、これがあることで将来にわたり症状が残る可能性は格段にあがります。
そのため、仮に外傷による画像所見がないとしても、完治を妨げる何らかの所見がある場合にはきちんと記載してもらうようにしましょう。
障害内容の憎悪・寛解の見通しなど
一般的な後遺障害診断書だと、診断日や診断書発行日の記載や医師の署名押印などの記載の近くに記載される部分です。ここの記載内容も大変重要です。
医師は、将来的に症状が回復することを願って、ここの記載を「寛解する見込み」とか、「徐々に軽快するだろう」と記載しがちです。
このような記載があると、自賠責保険としては後遺障害認定を出しにくくなります。
いつか治る可能性があるなら、後遺障害とはいえないからです。
医師であっても、むち打ちによる症状が治ることを的確に予測することは困難であるはずです。そのため、この部分は治ることが確実であるという場合以外は、治る可能性を示唆する記載は避けましょう。
単に、「残存する見込み」や、「完治は望めない」という記載があるといいでしょう。
気になったら弁護士へ相談を
いかがでしょうか。
後遺障害診断書は、後遺障害認定を受けるうえで最重要書類です。
そのため、書き方を誤ると、それだけで認定を受けられないこともあります。
もし、医師に書いてもらった後遺障害診断書に疑問を持ったら、まずは交通事故を多く扱っている弁護士に相談しましょう。
修正すべき点などをお伝えします。
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