後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)とは?

後遺障害慰謝料は、交通事故によって後遺障害が残存した場合に、将来にわたって抱え続ける痛み、残り続ける機能障害等の精神的損害を補填するものです。

この記事の監修者

弁護士 山田 洋斗

弁護士法人サリュ千葉事務所 所長弁護士
千葉県弁護士会所属
明治大学法科大学院卒業

【獲得した画期的判決】
・2021年8月 自保ジャーナル2091号114頁に掲載(交通事故事件)
・2022年 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻(赤い本)105頁に掲載
【交通事故解決件数】
1000件以上(2023年2月時点)

目次

傷害慰謝料と後遺障害慰謝料の違いは?

ここで、傷害慰謝料(入通院慰謝料)と後遺障害慰謝料を混同してしまう方がいらっしゃいますが、これは全く別物です。

傷害慰謝料は、事故日から治療終了(症状固定日)までの痛み、日常生活への影響等の精神的損害に対する補填であるのに対し、後遺障害慰謝料は、将来もずっと抱え続けなければならない痛み、機能障害等に対する精神的損害の補填です。つまり、慰謝料の対象となる時点が異なるのです。したがって、後遺障害が認定されれば、傷害慰謝料とは別途、後遺障害慰謝料をもらうことができます。

交通事故で保険会社からもらえる「慰謝料」って?どんな種類がある?

傷害慰謝料は期間が長ければ長いほど金額が上がっていくのに対し、後遺障害慰謝料は、残った後遺障害がどれほど重篤なものなのかどうかによって金額が変わります。

そして、後遺障害の重篤さのレベルは、現在の交通事故実務では、概ね1級から14級に分類されており、1級が重く、14級が最も軽い後遺障害ということになります。

当然、後遺障害が認定されない限り、後遺障害慰謝料はもらえません。つまり、現在の交通事故実務では、治療終了後において痛みや機能障害等が残っていても、それが後遺障害として認定されない限り、基本的には「完治」している、という前提で話が進んでいくことになります(歯牙欠損の場合など一部例外はあります)。

後遺障害慰謝料の額は?

以下では、後遺障害等級ごとの後遺障害慰謝料の額をご説明いたします。ここでも、自賠責基準と弁護士基準とで、金額に大きな開きがでてきます。

自賠責基準

○自動車損害賠償保障法施行令別表第1の場合(※常時または随時介護を要するような重度後遺障害の場合です)

第1級第2級
1650万円1203万円

○自動車損害賠償保障法施行令別表第2の場合

第1級第2級第3級第4級第5級第6級第7級第8級第9級第10級第11級第12級第13級第14級
1150万円998万円861万円737万円618万円512万円419万円331万円249万円190万円136万円94万円57万円32万円

なお、別表第1、別表第2の1級から3級で、被扶養者がいる場合には、増額されます。

弁護士基準

第1級第2級第3級第4級第5級第6級第7級第8級第9級第10級第11級第12級第13級第14級
2800万円2370万円1990万円1670万円1400万円1180万円1000万円830万円690万円550万円420万円290万円180万円110万円

以上の表のように、後遺障害慰謝料についても、弁護士基準で算定した方が、金額は大きくなります。たとえば、14級だと3倍以上、7級だと2倍以上の差が生じます。

千葉地裁の後遺障害慰謝料の認定について

弁護士基準の後遺障害慰謝料をそのまま認定した千葉地裁の裁判例

たとえば、千葉県八千代市で発生した交通事故により、左大腿骨頸部骨折等の傷害を負い、左大腿骨の人工骨頭置換等の治療をして9級の後遺障害が残存した事例(千葉地裁平成26年9月17日判決)では、上記表のとおり、後遺障害慰謝料を690万円と認定しています。

弁護士基準を超える後遺障害慰謝料を認定した千葉地裁の裁判例

他方で、上記の弁護士基準の表よりも大きな金額を認定したケースもあります。

裁判所は、一定の基準があることを前提にしつつも、個別具体的にその基準以上の後遺障害慰謝料を認定することが妥当と判断した場合には、基準に捉われることなく、妥当な後遺障害慰謝料を算定いたします。

千葉地方裁判所の事例で、弁護士基準以上の慰謝料を算定している事例としては、以下のものがあります。

弁護士基準以上の慰謝料を認定した千葉地裁の裁判例

千葉地裁平成24年12月19日判決

千葉県市川市で発生した交通事故で、右脛骨骨幹部解放骨折等の傷害を負い、12級の後遺障害が残った事例(千葉地裁平成24年12月19日判決)では、右下腿術後瘢痕は、同部に13㌢㍍、17㌢㍍及び14㌢㍍の明らかな醜状痕が残存することが認められる。しかし、同部位及び原告が本件事故当時7歳の児童であったことからして、将来の労働能力を一部喪失し、収入の減少を来すとまでは認めることができないものの、心理的な影響から就職範囲が限定されるなどして間接的に影響を及ぼす可能性があることは肯定できるから、これを後遺障害慰謝料として考慮し、上記後遺障害12級相当額に150万円を加算した440万円とすることが相当である。」としています。

これは、醜状痕による直接的な収入減少はないため後遺障害逸失利益としての評価が困難であることを前提に、後遺障害慰謝料について弁護士基準(290万円)に150万円を加算して認定した事例です。他の損害項目で考慮できない損害について、後遺障害慰謝料という項目で調整した事例といえます。

千葉地裁佐倉支部平成18年9月27日判決

また、千葉県成田市で起きた交通事故で、加害者が飲酒により対向車線にはみ出して運転していた結果、被害者に対して脳挫傷、外傷性歯牙脱臼等の傷害を負わせた事案(千葉地裁佐倉支部平成18年9月27日判決)では、被害者が「後遺障害等級1級3号に該当する後遺障害を負ったこと、その程度も、遷延性意識障害等により、寝たきりで、全介助・気管切開・胃ろうからの栄養補給を要する状態にあるなど、きわめて重篤なものであり、人生を奪われたに等しいこと、被告は、酒気帯びの状態で、制限速度を超える速度で自動車を走行させ、前方注視を怠った過失により、本件事故を惹起したものであり、その態様が悪質であるといえることなどに照らせば、後遺障害慰謝料としては、3,200万円とするのが相当である。」と判断して、弁護士基準である2800万円を大きく超える後遺障害慰謝料を認定しました。

このように、個別具体的な事情によっては、弁護士基準以上の慰謝料を認定するケースがあります。

ご自身の後遺障害慰謝料が、どのように認定されるのか、気になった方は交通事故事故専門弁護士に、ご相談ください。

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この記事の監修者

弁護士 山田洋斗
弁護士法人サリュ千葉事務所所長弁護士。2015年から2020年まで交通事故発生件数全国最多の愛知県において多くの交通事故案件を扱い、これまで1000件以上(2023年2月時点)の交通事故案件を解決に導いてきた。2020年6月から地元の千葉県において千葉事務所所長弁護士に就任。日々、千葉県で交通事故被害に悩んでいる被害者の救済に尽力している。

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