死亡慰謝料、近親者慰謝料って?

この記事の監修者

弁護士 山田 洋斗

弁護士法人サリュ千葉事務所 所長弁護士
千葉県弁護士会所属
明治大学法科大学院卒業

【獲得した画期的判決】
・2021年8月 自保ジャーナル2091号114頁に掲載(交通事故事件)
・2022年 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻(赤い本)105頁に掲載
【交通事故解決件数】
1000件以上(2023年2月時点)

目次

死亡慰謝料、近親者慰謝料とは?

交通事故によって被害者が命を失うことになった場合に、その亡くなった本人の無念さを補填するものとして死亡慰謝料があります。本人が亡くなっている以上、実質的にはこの死亡慰謝料は相続人が受領することとなります。

また、近親者慰謝料は、交通事故の直接の被害者が死亡または重度の傷害を負ったことで、その近親者が負った精神的損害を補填するものです。基本的には、死亡事故の場合に、近親者固有の精神的損害として考慮されることなります。実際は、死亡慰謝料と合わせて考慮されることが多いです。

死亡慰謝料と近親者慰謝料の自賠責基準と弁護士基準の違いとは?

自賠責基準

本人分400万円
被害者の父母、配偶者、子1人の場合は550万円、2人の場合は650万円、3人以上の場合は750万円

弁護士基準

一家の支柱2800万円
母親、配偶者2500万円
その他2000万円~2500万円 

なお、上記の弁護士基準は死亡慰謝料の総額であり、近親者固有の慰謝料も含めた金額です。

弁護士基準より多額の死亡慰謝料がもらえるケースもある?

弁護士基準はあくまで慰謝料算定の基準でしかなく、以下のように、これを超える慰謝料が認定されるケースもあります。

千葉地裁松戸支部平成27年7月30日判決

千葉県柏市で発生した交通事故で、被害者が急性硬膜下血腫の傷害を負って死亡した事案(千葉地裁松戸支部平成27年7月30日判決)で、裁判所は、亡くなった本人の慰謝料を2800万円と認定しつつ、その妻の慰謝料について以下のように述べて合計3250万円の慰謝料を認定しました。

「突然、夫であり子らの父であるA(※被害者本人)を失い、夫婦の平穏な生活を奪われ、大きな喪失感を抱いていること、本件事故後の被告による原告らへの対応や刑事事件の公判における態度等、本件に顕れた一切の事情を考慮し、原告(※妻)の精神的苦痛に対する慰謝料として250万円を認める」

また、子2名についても、「未だ学生であったにもかかわらず、頼るべき父親を失ったこと、その他本件に顕れた一切の事情を考慮し、その精神的苦痛に対する慰謝料として各100万円を認める」と判断しました。

この事例では、事故後の加害者の対応が慰謝料の増額事由になっています。私が確認した判決文では詳細が不明でしたが、被害者側の主張によると、加害者が事故後に救助活動を一切しなかったこと、遺族への謝罪がなかったこと、事故の原因が被害者の飛び出しであると主張して過失を否定したこと、加害者が免許取消になったことが無念であると述べ自己保身の態度を示したことなどの主張がありました。

千葉地裁平成26年9月25日判決

また、千葉県内の死亡事故の事例(千葉地裁平成26年9月25日判決)では、「(被害者は、)本件事故前の平成23年4月から保育士として稼働を始めていたこと、家庭内においては家事労働も担っていたこと、本件事故は、被告のいわゆる居眠り運転によるもので、被告の一方的過失によるものであることからすると、死亡による慰謝料として2,500万円が相当」としました。さらに、この事例では被害者の子がわずか1歳であったことなどをも考慮して、被害者の夫や子に対して、それぞれ200万円の近親者慰謝料を認定し、実の父母にもそれぞれ100万円の近親者慰謝料を認定しました。この事例では合計3100万円の慰謝料が認定されたことになります。

このように、弁護士基準を超える慰謝料が認定されるケースもあり、加害者が強く責められるべき場合、被害者が通常よりも強い精神的損害を負ったような場合には、弁護士基準以上の金額を請求すべき場合もあるでしょう。

千葉地裁平成22年5月28日判決

なお、近親者慰謝料は、被害者に重度の後遺障害が残った場合には、被害者が死亡していなくても認められる場合があります。

たとえば、千葉県千葉市で発生した交通事故により、急性硬膜下血腫の傷害を負い、高次脳機能障害として5級の後遺障害が残った事例(千葉地裁平成22年5月28日判決)で、「(被害者の収入は、)学歴等からすると、男子大学・大学院卒平均賃金相当額より大きかった可能性があること、同人は、前記認定のとおり、本件事故により、精神障害と身体的障害の双方にわたる非常に重篤な後遺障害を遺し、その日常生活上の負担も大きいこと、症状固定後も整体等の治療の必要を生じていること」などから裁判基準(1400万円)を超える1700万円の後遺障害慰謝料を認定しつつ、さらに、両親に各50万円の近親者慰謝料を認定しました。

慰謝料に基準が設けられているとしても、その通りの慰謝料が妥当とはいえない場合もあります。慰謝料の算定に関しては、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめいたします。

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この記事の監修者

弁護士 山田洋斗
弁護士法人サリュ千葉事務所所長弁護士。2015年から2020年まで交通事故発生件数全国最多の愛知県において多くの交通事故案件を扱い、これまで1000件以上(2023年2月時点)の交通事故案件を解決に導いてきた。2020年6月から地元の千葉県において千葉事務所所長弁護士に就任。日々、千葉県で交通事故被害に悩んでいる被害者の救済に尽力している。

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