交通事故でもらえる慰謝料について徹底解説!相場と計算方法について

交通事故でもらえる「慰謝料」って、そもそも何のことでしょうか。交通事故でもらえる慰謝料の種類は何があるでしょうか。

このページでは、交通事故で保険会社からもらえる慰謝料について、交通事故に特化した弁護士が徹底的に解説します。

この記事の監修者

弁護士 山田 洋斗

弁護士法人サリュ千葉事務所 所長弁護士
千葉県弁護士会所属
明治大学法科大学院卒業

【獲得した画期的判決】
・2021年8月 自保ジャーナル2091号114頁に掲載(交通事故事件)
・2022年 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻(赤い本)105頁に掲載
【交通事故解決件数】
1000件以上(2023年2月時点)

目次

慰謝料とは?

慰謝料とは何のことを指すのでしょうか。交通事故によって怪我をすると、被害者は痛みを感じたり、病院にいかなければいけなくなったり、色々と嫌な思いをします。ざっくりいうと、交通事故賠償で支払われる慰謝料とは、こういった精神的損害に対する賠償のことをいいます。

交通事故による痛みの感じ方や日常生活への影響度合いは人それぞれ異なり、怪我をした部位・程度、入院通院の有無・期間、男女の差、後遺障害の有無・程度等によって、本来的には増減されるものです。

しかし、交通事故は、全国で多数発生します。以下の表のとおり、千葉県の交通事故死傷者数は他の都道府県に比べてかなり多く、令和元年では交通事故死亡者数ワースト1位となりました。特に千葉県では都市部(船橋、千葉、柏、松戸、市川)を中心に頻繁に交通事故が発生しています。

H28年H29年H30年H31(R1)年
発生件数18,02218,03017,37416,476
死者数185(2位)154(5位)186(2位)172(1位)
負傷者数22,39622,10621,16019,904

そのような中で、個々人の状況をそれぞれ考慮し、慰謝料を決めていくことは、事案の解決が先延ばしになり、賠償金の支払いが滞ってしまいます。

そこで、千葉県の裁判所では慰謝料の支払基準を定め、迅速かつ公平な賠償手続きとなるよう運用されています。ここでいう支払基準は、弁護士や裁判所が使う基準以外にも複数あり、これを知らないまま示談をしてしまうと、後悔することになるでしょう。

慰謝料にはどんな種類がある?

交通事故でいう「慰謝料」には、以下のように種類があります。

①傷害慰謝料(入通院慰謝料)

②後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)

③死亡慰謝料

④近親者慰謝料

傷害慰謝料(入通院慰謝料)について

①の傷害慰謝料(入通院慰謝料)は、交通事故から治療終了までの間、痛みを抱え続けながら日常生活を送った精神的苦痛、時間を割いて病院に通わざるを得なかった精神的苦痛を補填するものです。一般的には、傷病の程度、入通院の有無・期間等により計算されます。

後遺症慰謝料(後遺症慰謝料)について

②の後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)は、交通事故によって後遺障害が残存した場合に、将来にわたって抱え続ける痛み、残り続ける機能障害等による精神的損害を補填するものです。

死亡慰謝料について

③の死亡慰謝料は、交通事故によって被害者が命を失うことになった場合に、その亡くなった本人の無念さを補填するものです。ただし、本人が亡くなっている以上、この死亡慰謝料は相続人が受領することとなります。

近親者慰謝料について

④の近親者慰謝料は、交通事故の被害者が死亡または重度の傷害を負ったことで、その近親者が負った精神的損害を補填するものです。基本的には、死亡事故の場合に、近親者固有の精神的損害として考慮されることなります。実際は、③の死亡慰謝料と合わせて考慮されることが多いです。

交通事故に遭った場合には、どのような賠償金がもらえるのか、交通事故を多く扱っている弁護士に早期に相談しましょう。

慰謝料の3つの基準とは?相場と計算方法

傷害慰謝料は、交通事故から治療終了までの間、痛みを抱えながら通院したこと、日常生活への悪影響等を補填するものです。

ただし、傷害慰謝料の計算には、

3つの基準があるといわれています。

それは、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判所基準)です。以下で、詳しく説明していきます。

なお、以下の動画で当法人の弁護士山岸正芳と西内勇介が、慰謝料のことについて5分程度で説明しておりますので、ご参照ください。

【交通事故】弁護士に頼むと受け取れる賠償金が増えるって本当?【解説】

☆自賠責基準

自賠責保険は、強制加入とすることで広く交通事故の被害に遭った方の最低限の賠償を確保することを主眼としています。そのため、自賠責基準による慰謝料は、低廉な場合が多いです。

自賠責基準の慰謝料の計算方法は、

   4300円×通院日数×2

   or

   4300円×総治療日数(期間)

   のどちらか金額の低い方

となります。

※もっとも、この基準は令和2年4月1日以降に発生した事故に適用される基準であり、平成22年4月1日以降令和2年3月31日までに発生した事故については4300円ではなく4200円となります。

たとえば、6か月(180日間)の治療期間で、通院日数(病院に治療に行った日)が80日だとした場合は、

①4300円×80日×2=688,000円

②4300円×180日=774,000円

となり、①<②ですので、自賠責基準で計算される慰謝料は688,000円となります。

なお、実際に半年間治療した場合、治療費や交通費、休業損害、慰謝料を合計すれば自賠責保険の上限である120万円を超える場合が多く、その場合は120万円に満つるまでの慰謝料が計算されるに過ぎません。

たとえば1年間通院して通院日数が200日の場合に、365日×4300円=1,569,500円の慰謝料をもらえると勘違いしている被害者の方が多くいますが、これは120万円の自賠責保険の上限を超えてしまっていますので、もはや自賠責基準は適用されません。120万円を超えた部分については任意保険基準や弁護士基準で計算して交渉していくことが一般的となります。

☆任意保険基準

任意保険基準とは、交通事故の加害者が加入している対人賠償責任保険の内部基準のことをいいます。被害者側はこの基準にしたがう義務はなく、堂々と増額を求めるべきです。

参考までに、旧任意保険基準の表をご紹介いたします。

 0か月1か月2か月3か月4か月5か月6か月7か月8か月9か月10か月11か月
0か月025.250.475.695.8113.4128.5141.1152.5162.5170.1177.7
1か月12.637.86385.7104.6121134.8147.4157.5167.5173.9180.2
2か月25.250.473.194.5112.2127.3141.1152.4162.5171.3176.4182.8
3か月37.860.581.9102.1118.5133.6146.1157.4166.3173.8179185.3
4か月47.969.389.5108.4124.8138.6151.1161.2168.8176.4181.5187.8
5か月56.776.995.8114.7129.8143.6154.9163.7171.4178.9184190.3
6か月64.383.2102.1119.7134.8147.4157.4166.3173.9181.4186.5192.8
7か月70.689.5107.1124.7138.6149.9160168.8176.4183.9189195.3
8か月76.994.5112.1128.5141.1152.5162.5171.3178.9186.4191.5197.8
9か月81.999.5115.9131143.7155165173.8181.4188.9194200.3
10か月86.9103.3118.4133.6146.2157.5167.5176.3183.9191.4196.5 
11か月90.7105.8121136.1148.7160170178.8186.4193.9  

上記の表によると、たとえば、6か月通院をした場合には、643,000円の慰謝料となります。

なお、前記の例のように、仮に6か月の通院日数が80日の場合、自賠責基準で計算した方が高額となるため、保険会社は自賠責基準の計算を前提に示談の提案をしてくると思われます。

この任意保険基準は、後で説明する弁護士基準(裁判所基準)よりも低額な場合が多く、弁護士を介入させることで大幅な増額が可能となります。

☆弁護士基準

次に、いわゆる弁護士基準といわれる基準を説明します。交通事故の被害者が慰謝料の相場や計算方法を把握しようとする場合、この弁護士基準を前提に理解していくことが重要です。

弁護士基準とは、実際に訴訟をした場合に裁判官が計算する慰謝料の基準のことを指します。裁判所は、基本的に「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(いわゆる赤い本)にしたがい、迅速かつ公平の観点からある程度基準化された慰謝料を計算するケースが多いです。

弁護士基準の慰謝料は、以下のようにケガの内容に応じて二つの表を使い分けることになります。

通常の場合の弁護士基準の表(別表Ⅰ)

通常の場合の基準とは、後で説明するむちうち以外の骨折や半月板損傷、腱板損傷といったケガを負った場合の基準です。赤い本では「別表Ⅰ」として記載されています。

通常の場合の弁護士基準の表(別表Ⅰ)

 0か月1か月2か月3か月4か月5か月6か月7か月8か月9か月10か月11か月
0か月 53101145184217244266284297306314
1か月2877122162199228252274291303311318
2か月5298139177210236260281297308315322
3か月73115154188218244267287302312319326
4か月90130165196226251273292306316323328
5か月105141173204233257278296310320325330
6か月116149181211239262282300314322327332
7か月124157188217244266286304316324329334
8か月132164194222248270290306318326331336
9か月139170199226252274292308320328333338
10か月145175203230256276294310322330335 
11か月150179207234258278296312324332  

たとえば、6か月通院した場合には、116万円の慰謝料となります。入院3か月、通院6か月の場合は211万円の慰謝料が認定されることになります。

このように、弁護士基準の慰謝料は、自賠責基準や任意保険基準の倍近い金額となるケースは多くあります。ご自身の治療期間と照らし合わせてみて、相場を把握してみましょう。

なお、日数に端数が生じる場合、たとえば入院55日(1か月と25日)、通院195日(6か月と15日)というような場合、入院1か月と通院6か月の金額(149万円…①)を起点として、日割りで計算することになります。

  つまり、

  ・181万円-149万円=32万円

   32万円÷30日×25日=26万6666円…②

  ・157万円-149万円=8万円

   8万円÷30日×15日=3万9999円…③

   ①149万円+②26万6666円+③3万9999円=179万6665円

   となります。

実際の千葉地裁の運用(通常の場合)

実際の裁判所の認定では、必ずしも1円単位で計算されるわけではないのですが、千葉地方裁判所においても、結論として上記の算定表に近い傷害慰謝料を認定しています。

例えば、千葉県市川市で発生した交通事故で、被害者が左下腿骨骨折、大腿骨骨折等の傷害を負った事例(千葉地裁平成6年10月27日判決)では、入院1か月半、通院10か月半の治療期間で損害額として約180万円の慰謝料を認定(過失相殺後の認定額は110万円)しています。

また、千葉県船橋市で発生した交通事故で、被害者が左第1中足骨剥離骨折等の傷害を負った事例(千葉地裁平成26年3月13日判決)では、入院24日、通院3か月と6日の治療期間で110万円の傷害慰謝料を認定しています。

むちうち症で他覚的所見のない場合(別表Ⅱ)

頚椎捻挫、腰椎捻挫、打撲、擦り傷等の場合、骨折等に比べて痛みが小さいうえ、日常生活への影響もそれほど大きくないことから、通常の場合よりも低い金額で慰謝料が計算されます。赤い本では「別表Ⅱ」と言われています。

むちうち症等による慰謝料の基準(別表Ⅱ)

 0か月1か月2か月3か月4か月5か月6か月7か月8か月9か月10か月11か月
0か月 356692116135152165176186195204
1か月195283106128145160171182190199206
2か月366997118138153166177186194201207
3か月5383109128146159172181190196202208
4か月6795119136152165176185192197203209
5か月79105127142158169180187193198204210
6か月89113133148162173182188194199205211
7か月97119139152166175183189195200206212
8か月103125143156168176184190196201207213
9か月109129147158169177185191197202208214
10か月113133149159170178186192198203209 
11か月117135150160171179187193199204  

たとえば、6か月の通院期間の場合、89万円の慰謝料となり、3か月の通院期間の場合、53万円の慰謝料となります。

このように、むちうち症であった場合でも、弁護士基準で計算した慰謝料は自賠責基準や任意保険基準よりも多額になります。

実際の千葉地裁の運用(むちうち症の場合)

千葉県の裁判所においても同様の運用がされています。

たとえば、千葉県白井市で発生した追突事故で、被害者が頚椎捻挫等の傷害を負った事例(千葉地裁松戸支部平成27年2月12日判決)で、裁判所は治療期間を87日としたうえで、傷害慰謝料を50万円と計算しています。

弁護士に頼むことで弁護士基準による示談が可能に?交通事故を弁護士に依頼する最大のメリットとは

弁護士基準の慰謝料は、自賠責基準や任意保険基準よりも多額の慰謝料となるケースが多いことはお分かりいただけたかと思います。

交通事故では、多くの場合で弁護士に依頼することで慰謝料が劇的に増額します。これは、弁護士に依頼することで弁護士基準を前提にした慰謝料の交渉が可能になるからです。

では、なぜ弁護士に依頼すると弁護士基準の慰謝料を前提にした示談が可能になるのでしょうか。

それは、弁護士に依頼する=訴訟に発展する可能性がある

ということが大きいと思われます。

保険会社としては、訴訟になれば弁護士基準の慰謝料を認定されてしまう可能性が高く、弁護士へ依頼した時点で訴訟への発展を視野にいれることになります。もちろん弁護士に依頼したからといってすぐに裁判に発展するというわけではなく、ほとんど(8割以上)は示談で解決します。しかし、保険会社が自賠責基準や任意保険基準に固執すれば、被害者側に訴訟提起されて弁護士基準の慰謝料はもちろん、遅延損害金や弁護士費用まで支払うことになります。すると、保険会社としては支払う慰謝料を多くせざるを得ないのです。

結果的として、訴訟に移行することなく十分な慰謝料を回収できることになるのです。

交通事故を弁護士に依頼する最大のメリットは、この慰謝料の増額にあります。

交通事故のご相談は、早い段階で。依頼を強制することはありません。

弁護士基準の慰謝料を獲得するための4つのポイントは?

弁護士基準で算出される慰謝料は、基本的には傷病の程度(骨折等の重傷か、むち打ち症等の軽傷か)、治療期間の長さで決まってきます。

このように考えると、治療期間が長ければ長いほど、慰謝料も高額になると思うかもしれません。

しかし、たとえば頚椎捻挫、腰椎捻挫等の傷病名で6か月間の治療期間であったとしても、事案によっては弁護士基準の慰謝料を獲得できない可能性が出てきます。

以下では、弁護士基準の慰謝料を獲得するための方法を説明いたします。

①治療はできるだけ整形外科を中心に。整骨院への通院は医師とも相談しましょう。

整形外科での治療ではなく、接骨院や整骨院の治療がメインとなっていて、その治療費が高額になっている場合には注意が必要です。

接骨院や整骨院の治療費は、保険会社が「必要のない費用では?」と主張してくるケースが多々あります。

接骨院や整骨院における治療は、被害者からすれば痛みが軽減され、有効だと感じることが多いです。また、整形外科よりも時間に融通がきき、通いやすいというメリットもあり、痛みを少しでも軽減したいと思う被害者にとって、強い味方になってくれます。

しかし、実際の賠償交渉では、「非科学的な治療である」、「整形外科における医学的な治療と異なり根本的な治療とはいえない」などと保険会社側から主張され、必要性や相当性を否定されるケースが多くあります。

特に長期間にわたり、しかも多数回、接骨院や整骨院に通っていると、その治療費も高額になり、治療の必要性・相当性に疑義が生じます。この整骨院や接骨院の治療費を相手方保険会社が既に支払っている場合、弁護士基準の慰謝料をそのまま回収できない場合があります。これは、整骨院や接骨院の治療が必要性、相当性の乏しいものだと判断されると、治療費の損害項目としては過払いとなる可能性が出てくるからです。

治療中は、保険会社の担当者は「接骨院にいってもいいですよ」というかもしれません。

しかし、訴訟等に移行した場合には、保険会社はこれらの発言を平気で撤回します。

保険会社は、あくまで賠償金の一部として支払ったに過ぎない、接骨院の治療費は無駄な費用であった、などと主張するのです。

よって、整形外科のリハビリテーションにおける治療の方が、保険会社に弱みを握られないためには賠償上は有効です。

ただし、現実問題として、整形外科における治療は湿布や薬を処方するのみで、被害者として不十分であると感じるケースがあります。そのため、整骨院や接骨院における治療の方が有効であると感じる方もいます。

この点、整骨院や接骨院の治療は、必ずしも全てダメというわけではありません。医師の許諾がある場合、指示がある場合、施術の内容が実質的に整形外科におけるリハビリテーションと同等である場合、有効性が認められる場合などは、接骨院や整骨院の治療費も、必要性や相当性が肯定されることがあります。

接骨院や整骨院の治療費について争いが生じそうであれば、その対応については弁護士にご相談ください。

②治療頻度は週3、4回程度がベスト

治療内容や通院頻度については、基本的に医師の指示にしたがうことになります。もっとも、賠償上は週に3、4回程度がよいと思われます。たとえば月に1回程度の治療だと、それだけで「痛みはそんなになかったのでは?」「症状は軽いのでは?」と思われてしまうからです。

痛みというのは、目に見えるものではありません。もちろん、骨折や脳損傷など、画像所見の明らかなケガであればいいのですが、むち打ち等の他覚的所見のないケガだと、保険会社に痛みを理解してもらうのは難しくなってきます。

そこで、通院実績という形で、痛みを証拠に残すことが重要です。

なお、通院日数(実際に病院に行った日数)が少ない場合に、保険会社が弁護士基準の慰謝料の支払いを拒むのは、もう一つ、重要なカラクリがあります。

それは示談後の自賠責保険からの回収の問題です。

保険会社(任意保険会社)は被害者との示談後、支払った賠償金のうちの一部を自賠責保険に回収しにいきます。

当然、保険会社は被害者と示談する際も、「自賠責からいくら回収できるのか?」というのを意識しながら交渉するはずです。

自賠責保険の慰謝料は、通院日数×4300円×2で計算されることが多いです。

つまり、被害者側が「通院期間」をベースに弁護士基準の慰謝料を請求しても、保険会社は「通院日数」をベースにした計算(自賠責基準)を念頭におくため、ここで慰謝料の考え方に乖離が生じるのです。

たとえば月1回の通院を6か月間継続していた場合と、月15回(週3回くらい)の通院を6か月継続していた場合では、以下のように自賠責保険基準の支払い額に大きな金額差が生じます。

月1回の通院を6か月継続していた場合  4300円×6日×2=51,600円

月15回の通院を6か月継続していた場合  4300円×90日×2=774,000円

すなわち、保険会社からすれば、たとえば月1回の通院だけだと、「通院日数が少ないから自賠責から回収できる賠償金も少ない。弁護士基準で支払ったら、うちの手出しが多くなる。だから弁護士基準の慰謝料は支払えない。」という判断になるのです。

このように、早期に、かつ、妥当な賠償金を回収するためには、通院日数を確保することが重要といえるでしょう。

ただし、毎日のように通院していると、それはそれで過剰診療の問題が生じてきますし、自賠責保険の上限額(120万円)に早期に到達するため、治療費の打ち切りが早まる可能性があります。通いすぎも、注意が必要です。

③治療期間が長すぎるのも注意

傷病の程度に相応しないほど長期間の治療となっている場合、保険会社から「本来はもっと早く治療を終えるべきだったのでは?」と主張され、短い治療期間を認定される可能性があります。そうすると、実際に通った期間分の慰謝料を回収できなくなる可能性があります。

たとえば、頚椎捻挫や腰椎捻挫等、むちうち症といわれるケガの場合、妥当な治療期間は3か月~6か月といわれています。

もちろん、個人差はありますし、6か月以上通ったらダメというわけではありません。

ただ、特に治療費を相手方保険会社が立て替えて支払っている場合(いわゆる一括対応をしている場合)、示談交渉時になって、「本当に妥当な治療期間は○か月であり、それ以上の治療費を立て替えているのだから慰謝料から差し引きされるべきだ」などと主張される可能性があります。

私の経験上、むちうち症で1年の治療期間を超えてくると、1年分の弁護士基準の慰謝料を回収することが難しくなってきます。

また、そもそも弁護士基準の慰謝料は「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(いわゆる赤い本)をベースに計算されるのですが、そこには「通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3.5倍(別表2なら3倍)程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある。」と記載されています。

たとえば、むちうち症で1年6か月間治療して、その間、月5日程度の実通院日数(合計90日くらい)だった場合、「通院が長期」にわたっていると判断され、90日×3=270日(9か月)が慰謝料算定の治療期間となるということです。

このように、特に相手方保険会社に治療費を立て替えてもらっている場合、治療期間が長くなりすぎるのもよくありません。

④既往症と判断される疾患がない方がいい

頚部挫傷後の頚部痛や、腰部挫傷後の腰部痛については、それぞれ頚椎椎間板ヘルニア、腰椎椎間板ヘルニア等の持病(既往症)を有している被害者は注意が必要です。

この場合、「事故後の治療のうち一部はもともとあった持病の影響では?」と主張される危険があります。

脊柱管狭窄症や後縦靭帯骨化症、骨粗鬆症、脳性麻痺などの場合も、既往症の主張をされる場合があります。

千葉地裁の既往症に関する判決

たとえば、千葉県の交通事故の事例でも、以下のように既往症の主張を裁判所が認め、損害額が減額された事例があります。

千葉地裁平成21年5月27日判決

千葉県千葉市で発生した交通事故で、被害者が頚椎捻挫、腰椎捻挫、外傷性頚肩腕症候群等の傷病を負ったものの、被害者には事故前から頚椎狭窄、腰椎狭窄及び頚椎ヘルニア等の持病があった事例で裁判所は、

本件事故による「外力の衝撃は小さかったと認められること、頚椎の変性狭窄不安定性はC4からC7と広範囲に及んでいること、このような広範囲の頸椎の変性狭窄不安定性は、本件事故による外力だけでは説明は困難であると解されること」などを理由に、「頚椎の変性狭窄及びヘルニアは加齢に伴う通常の変性ということはできず、民法722条2項を類推適用して、素因を斟酌し(最高裁平成20年3月27日第1小法廷判決参照)、その寄与の割合を3割と認めるのが相当である」

と判断し、被害者の損害を3割減額しました。

ただし、このような持病があったからといって、ただちに治療の必要性や相当性を否定されるわけではありません。

特に、年を重ねるにつれて老化現象によって腰痛や頚部痛を発症することはよくあり、そのために整形外科に通うことは特におかしなことではありません。

たとえば、千葉県の裁判所でも、以下のような判断をした事例がありました。

千葉地裁平成16年9月15日判決

千葉県千葉市稲毛区で発生した交通事故で、被害者が頸椎捻挫、腰部打撲、左第7肋骨骨折、頭部打撲、腰椎捻挫、左胸部打撲の傷害を負った事例で裁判所は、

被害者が「56歳という年齢であったことにかんがみれば、同人の変形性頸椎症、変形性腰椎症及び骨粗鬆性変化は、加齢に通常伴う程度の変性ということができ、かかる変性は当然にその存在が予定されているものであるから、これを損害賠償の額を定めるにつき斟酌することは相当でない。

と判断し、保険会社側の減額の主張を否定しました。

このように、年相応の症状といえる場合には、身体的特徴の範疇といえ、既往症と判断されるべきではないでしょう。

保険会社から不合理に既往症を主張されている場合には、早期に交通事故専門の弁護士に相談することをおすすめいたします。

相場を超える慰謝料が認定される場合もある

上記で説明した弁護士基準の慰謝料は、裁判所が慰謝料を算定する際の参考とするための基準であり、事案によっては、弁護士基準の慰謝料を超える慰謝料を算定するケースもあります。

弁護士基準の慰謝料を計算する際に参照される「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(いわゆる赤い本)によると、「加害者に故意もしくは重過失(無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、ことさらに信号無視、薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転等)または著しく不誠実な態度等がある場合」に基準以上の慰謝料が認定されることとなります。

弁護士基準を超える慰謝料を認定した千葉地裁の裁判例

千葉県の裁判所においても、慰謝料の増額が認定されたケースがあります。

たとえば、千葉県成田市で起きた交通事故で、加害者が飲酒により対向車線にはみ出して運転していた結果、被害者に対して脳挫傷、外傷性歯牙脱臼等の傷害を負わせた事案(千葉地裁佐倉支部平成18年9月27日判決)では、入院期間が約10か月(裁判基準だと306万円の慰謝料)であるところ、350万円の慰謝料が認定されました。

なお、この事案では、1級の後遺障害が認定されており、弁護士基準によると2800万円の後遺障害慰謝料となるところ、以下のように判断して後遺障害慰謝料においても増額を認めました。

被害者が「後遺障害等級1級3号に該当する後遺障害を負ったこと、その程度も、遷延性意識障害等により、寝たきりで、全介助・気管切開・胃ろうからの栄養補給を要する状態にあるなど、きわめて重篤なものであり、人生を奪われたに等しいこと、被告は、酒気帯びの状態で、制限速度を超える速度で自動車を走行させ、前方注視を怠った過失により、本件事故を惹起したものであり、その態様が悪質であるといえることなどに照らせば、後遺障害慰謝料としては、3,200万円とするのが相当である。」

このように、弁護士基準の慰謝料はあくまで目安であり、個別具体的な事情によっては増額されるケースもあります。

弁護士に頼んでも弁護士基準での示談が難しいケースも 

残念ながら、弁護士に依頼しても、大きな増額が難しいケースもあります。私が経験した中でも、以下のような場合、慰謝料の増額が難しいと思われます。

接骨院や整骨院の治療費が高額になり、治療の相当性・必要性が否定されうる場合

接骨院や整骨院の治療費は、それ自体「必要のない費用だったのでは?」と加害者側から主張され、争われるケースが多いです。接骨院や整骨院における治療は、被害者からすれば痛みが軽減され、有効だと感じることが多いのですが、非科学的な治療であることや、整形外科における医学的な治療と異なり根本的な治療とはいえないなどと保険会社側から主張され、必要性や相当性を否定されるケースが多くあります。

特に長期間にわたり、しかも多数回、接骨院や整骨院に通っていると、その治療費も高額になり、治療の必要性・相当性に疑義が生じます。この整骨院や接骨院の治療費を、相手方保険会社が既に支払っている場合、弁護士基準の慰謝料をそのまま回収できない場合があります。これは、治療費の損害項目としては過払いとなる可能性が出てくるからです。

仮に、保険会社が治療期間中に接骨院や整骨院の治療費を立て替えて支払っているとしても、訴訟では「賠償金の一部として支払ったのみで、必要な治療費として認めたわけではない。」などと主張して簡単にひっくり返してきます。

このように、訴訟になった場合に被害者側にとって弱点となる部分があると、示談交渉において弁護士に依頼して慰謝料の増額交渉をしても、増額ができない場合があります。

ただし、このように高額な接骨院や整骨院の治療費が生じていても、医師が接骨院や整骨院での治療を許諾、指示している場合や、接骨院や整骨院における治療が整形外科におけるリハビリテーションとほとんど変わらないような場合、上記のような弱点をフォローできる場合があります。

あまりに長期の治療期間となっている場合

「慰謝料は、治療期間が長ければ長いほど高額になるのでは?」

そう思う方もいると思います。これは、正しくもあり、誤りでもあります。

たとえば、むちうち症等(頚椎捻挫、腰椎捻挫等)で3年間治療し、この治療費を保険会社がすべて立て替えて支払っていた場合、上記の接骨院や整骨院の治療費と同様、治療費の損害項目について過払いの状態になる場合があります。そうすると、慰謝料については増額が図れない場合があります。

むちうち症の場合、人によって異なりますが、治療期間としては3か月~6か月が妥当な治療期間といわれています。私の経験上、むち打ち症で8か月、9か月程度の治療期間だと交渉が苦しくなってくる印象があります。つまり、適切な時期で治療を中断しておくというのも、適切かつ早期に示談するためには必要になってくるということです。

受傷自体に疑義がある場合

3つ目は「そもそもケガしているの?」と、受傷したこと自体に疑義がある場合です。

典型的なのは、事故車の損傷状況が、擦り傷程度で修理は必要ないくらい軽微である場合です。

保険会社の担当者は事故そのものを目撃しているわけではないので、事故の大きさを把握する手段は車両の損傷写真等を確認することくらいです。稀に、事故車の写真をみると、車両の損傷が「そもそもどこを損傷しているの?」というくらい軽微なときがあります。

そのような事故で、被害者が何か月も治療をしてしまうケースがあります。実際には痛みがある以上、通院をすることは当然のことですが、軽微事故の場合には保険会社の担当者が受傷自体に疑いを持つことが少なくありません。

前記のとおり、保険会社が一旦は立て替えていたとしても、必ずしも受傷を認めたとはいえない場合があります。このような場合、被害者側が訴訟提起等の強気な態度に出ることはできず、慰謝料も増額が期待できないことが多くあります。

被害者が通院した期間分の慰謝料を認めなかった千葉地裁の事例

千葉県の裁判所でも、治療期間に相応する弁護士基準の慰謝料よりも低額な慰謝料を認定している例があります。

たとえば、千葉県千葉市で発生した交通事故(追突)で、被害者が頚椎捻挫となったと主張して約8か月通院し、130万円以上の慰謝料を請求した事案(千葉地裁平成28年1月15日判決)で、裁判所は、事故と因果関係のある治療期間を3か月半とし、傷害慰謝料として60万円を認定しました。被害者は実際には8か月以上通院したにもかかわらず、慰謝料は3か月半程度の治療期間を前提に算出されています。

このように、発生した交通事故に見合う治療期間ではない場合には、示談交渉においても慰謝料の増額が難しくなってくる場合があります。

弁護士法人サリュ千葉事務所では、弁護士に依頼した場合にどれくらいの慰謝料がもらえそうか、無料でお答えいたします。

後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)とは?

後遺障害慰謝料は、交通事故によって後遺障害が残存した場合に、将来にわたって抱え続ける痛み、残り続ける機能障害等の精神的損害を補填するものです。

ここで、傷害慰謝料(入通院慰謝料)と後遺障害慰謝料を混同してしまう方がいらっしゃいますが、これは全く別物です。傷害慰謝料は、事故日から治療終了(症状固定日)までの痛み、日常生活への影響等の精神的損害に対する補填であるのに対し、後遺障害慰謝料は、将来もずっと抱え続けなければならない痛み、機能障害等に対する精神的損害の補填です。つまり、慰謝料の対象となる時点が異なるのです。したがって、後遺障害が認定されれば、傷害慰謝料とは別途、後遺障害慰謝料をもらうことができます。

傷害慰謝料は期間が長ければ長いほど金額が上がっていくのに対し、後遺障害慰謝料は、残った後遺障害がどれほど重篤なものなのかどうかによって金額が変わります。

そして、後遺障害の重篤さのレベルは、現在の交通事故実務では1級から14級に分類されており、1級が重く、14級が最も軽い後遺障害ということになります。

当然、後遺障害が認定されない限り、後遺障害慰謝料はもらえません。つまり、現在の交通事故実務では、治療終了後において痛みや機能障害等が残っていても、それが後遺障害として認定されない限り、基本的には「完治」している、という前提で話が進んでいくことになります(歯牙欠損の場合など一部例外はあります)。

以下では、後遺障害等級ごとの後遺障害慰謝料の額をご説明いたします。ここでも、自賠責基準と弁護士基準とで、金額に大きな開きがでてきます。

☆自賠責基準

○自動車損害賠償保障法施行令別表第1の場合(※常時または随時介護を要するような重度後遺障害の場合です)

第1級第2級
1650万円1203万円

○自動車損害賠償保障法施行令別表第2の場合

第1級第2級第3級第4級第5級第6級第7級第8級第9級第10級第11級第12級第13級第14級
1150万円998万円861万円737万円618万円512万円419万円331万円249万円190万円136万円94万円57万円32万円

なお、別表第1、別表第2の1級から3級で、被扶養者がいる場合には、増額されます。

☆弁護士基準

第1級第2級第3級第4級第5級第6級第7級第8級第9級第10級第11級第12級第13級第14級
2800万円2370万円1990万円1670万円1400万円1180万円1000万円830万円690万円550万円420万円290万円180万円110万円

以上の表のように、後遺障害慰謝料についても、弁護士基準で算定した方が、金額は大きくなります。たとえば、14級だと3倍以上、7級だと2倍以上の差が生じます。

千葉地裁の後遺障害慰謝料の認定について

弁護士基準の後遺障害慰謝料をそのまま認定した千葉地裁の裁判例

たとえば、千葉県八千代市で発生した交通事故により、左大腿骨頸部骨折等の傷害を負い、左大腿骨の人工骨頭置換等の治療をして9級の後遺障害が残存した事例(千葉地裁平成26年9月17日判決)では、上記表のとおり、後遺障害慰謝料を690万円と認定しています。

弁護士基準を超える後遺障害慰謝料を認定した千葉地裁の裁判例

他方で、上記の弁護士基準の表よりも大きな金額を認定したケースもあります。

裁判所は、一定の基準があることを前提にしつつも、個別具体的にその基準以上の後遺障害慰謝料を認定することが妥当と判断した場合には、基準に捉われることなく、妥当な後遺障害慰謝料を算定いたします。

千葉地方裁判所の事例で、弁護士基準以上の慰謝料を算定している事例としては、以下のものがあります。

弁護士基準以上の慰謝料を認定した千葉地裁の裁判例

千葉地裁平成24年12月19日判決

千葉県市川市で発生した交通事故で、右脛骨骨幹部解放骨折等の傷害を負い、12級の後遺障害が残った事例(千葉地裁平成24年12月19日判決)では、右下腿術後瘢痕は、同部に13㌢㍍、17㌢㍍及び14㌢㍍の明らかな醜状痕が残存することが認められる。しかし、同部位及び原告が本件事故当時7歳の児童であったことからして、将来の労働能力を一部喪失し、収入の減少を来すとまでは認めることができないものの、心理的な影響から就職範囲が限定されるなどして間接的に影響を及ぼす可能性があることは肯定できるから、これを後遺障害慰謝料として考慮し、上記後遺障害12級相当額に150万円を加算した440万円とすることが相当である。」としています。

これは、醜状痕による直接的な収入減少はないため後遺障害逸失利益としての評価が困難であることを前提に、後遺障害慰謝料について弁護士基準(290万円)に150万円を加算して認定した事例です。他の損害項目で考慮できない損害について、後遺障害慰謝料という項目で調整した事例といえます。

千葉地裁佐倉支部平成18年9月27日判決

また、千葉県成田市で起きた交通事故で、加害者が飲酒により対向車線にはみ出して運転していた結果、被害者に対して脳挫傷、外傷性歯牙脱臼等の傷害を負わせた事案(千葉地裁佐倉支部平成18年9月27日判決)では、被害者が「後遺障害等級1級3号に該当する後遺障害を負ったこと、その程度も、遷延性意識障害等により、寝たきりで、全介助・気管切開・胃ろうからの栄養補給を要する状態にあるなど、きわめて重篤なものであり、人生を奪われたに等しいこと、被告は、酒気帯びの状態で、制限速度を超える速度で自動車を走行させ、前方注視を怠った過失により、本件事故を惹起したものであり、その態様が悪質であるといえることなどに照らせば、後遺障害慰謝料としては、3,200万円とするのが相当である。」と判断して、弁護士基準である2800万円を大きく超える後遺障害慰謝料を認定しました。

このように、個別具体的な事情によっては、弁護士基準以上の慰謝料を認定するケースがあります。

ご自身の後遺障害慰謝料が、どのように認定されるのか、気になった方は交通事故の被害者側専門の弁護士に、ご相談ください。

死亡慰謝料、近親者慰謝料って?

交通事故によって被害者が命を失うことになった場合に、その亡くなった本人の無念さを補填するものとして死亡慰謝料があります。本人が亡くなっている以上、実質的にはこの死亡慰謝料は相続人が受領することとなります。

また、近親者慰謝料は、交通事故の直接の被害者が死亡または重度の傷害を負ったことで、その近親者が負った精神的損害を補填するものです。基本的には、死亡事故の場合に、近親者固有の精神的損害として考慮されることなります。実際は、死亡慰謝料と合わせて考慮されることが多いです。

死亡慰謝料と近親者慰謝料の自賠責基準と弁護士基準の違いとは?

☆自賠責基準

本人分400万円
被害者の父母、配偶者、子1人の場合は550万円、2人の場合は650万円、3人以上の場合は750万円

☆弁護士基準

一家の支柱2800万円
母親、配偶者2500万円
その他2000万円~2500万円 

なお、上記の弁護士基準は死亡慰謝料の総額であり、近親者固有の慰謝料も含めた金額です。

相場を超える死亡慰謝料がもらえるケースもある

弁護士基準はあくまで慰謝料算定の基準でしかなく、以下のように、これを超える慰謝料が認定されるケースもあります。

千葉地裁松戸支部平成27年7月30日判決

千葉県柏市で発生した交通事故で、被害者が急性硬膜下血腫の傷害を負って死亡した事案(千葉地裁松戸支部平成27年7月30日判決)で、裁判所は、亡くなった本人の慰謝料を2800万円と認定しつつ、その妻の慰謝料について以下のように述べて合計3250万円の慰謝料を認定しました。

「突然、夫であり子らの父であるA(※被害者本人)を失い、夫婦の平穏な生活を奪われ、大きな喪失感を抱いていること、本件事故後の被告による原告らへの対応や刑事事件の公判における態度等、本件に顕れた一切の事情を考慮し、原告(※妻)の精神的苦痛に対する慰謝料として250万円を認める」

また、子2名についても、「未だ学生であったにもかかわらず、頼るべき父親を失ったこと、その他本件に顕れた一切の事情を考慮し、その精神的苦痛に対する慰謝料として各100万円を認める」と判断しました。

この事例では、事故後の加害者の対応が慰謝料の増額事由になっています。私が確認した判決文では詳細が不明でしたが、被害者側の主張によると、加害者が事故後に救助活動を一切しなかったこと、遺族への謝罪がなかったこと、事故の原因が被害者の飛び出しであると主張して過失を否定したこと、加害者が免許取消になったことが無念であると述べ自己保身の態度を示したことなどの主張がありました。

千葉地裁平成26年9月25日判決

また、千葉県内の死亡事故の事例(千葉地裁平成26年9月25日判決)では、「(被害者は、)本件事故前の平成23年4月から保育士として稼働を始めていたこと、家庭内においては家事労働も担っていたこと、本件事故は、被告のいわゆる居眠り運転によるもので、被告の一方的過失によるものであることからすると、死亡による慰謝料として2,500万円が相当」としました。さらに、この事例では被害者の子がわずか1歳であったことなどをも考慮して、被害者の夫や子に対して、それぞれ200万円の近親者慰謝料を認定し、実の父母にもそれぞれ100万円の近親者慰謝料を認定しました。この事例では合計3100万円の慰謝料が認定されたことになります。

このように、弁護士基準を超える慰謝料が認定されるケースもあり、加害者が強く責められるべき場合、被害者が通常よりも強い精神的損害を負ったような場合には、弁護士基準以上の金額を請求すべき場合もあるでしょう。

なお、近親者慰謝料は、被害者に重度の後遺障害が残った場合には、被害者が死亡していなくても認められる場合があります。

千葉地裁平成22年5月28日判決

たとえば、千葉県千葉市で発生した交通事故により、急性硬膜下血腫の傷害を負い、高次脳機能障害として5級の後遺障害が残った事例(千葉地裁平成22年5月28日判決)で、「(被害者の収入は、)学歴等からすると、男子大学・大学院卒平均賃金相当額より大きかった可能性があること、同人は、前記認定のとおり、本件事故により、精神障害と身体的障害の双方にわたる非常に重篤な後遺障害を遺し、その日常生活上の負担も大きいこと、症状固定後も整体等の治療の必要を生じていること」などから裁判基準(1400万円)を超える1700万円の後遺障害慰謝料を認定しつつ、さらに、両親に各50万円の近親者慰謝料を認定しました。

慰謝料に基準が設けられているとしても、その通りの慰謝料が妥当とはいえない場合もあります。慰謝料の算定に関しては、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめいたします。

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この記事の監修者

弁護士 山田洋斗
弁護士法人サリュ千葉事務所所長弁護士。2015年から2020年まで交通事故発生件数全国最多の愛知県において多くの交通事故案件を扱い、これまで1000件以上(2023年2月時点)の交通事故案件を解決に導いてきた。2020年6月から地元の千葉県において千葉事務所所長弁護士に就任。日々、千葉県で交通事故被害に悩んでいる被害者の救済に尽力している。

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