過失割合の交渉は、獲得できる賠償金の額を大きく左右します。特に、重傷を負い、重度の後遺障害が残った場合には、過失割合が1割増減するだけで何百万、何千万と金額が変わります。
ここでは、弁護士に過失割合の交渉を任せるメリットを説明します。
①緻密な事実調査ができる
過失割合を決めるにあたって重要なことは、「どのような事故だったのか」を明確にすることです。
保険会社の担当者や裁判官は、実際に事故を目撃したわけではありません。
したがって、できるだけ事故状況が明らかになる証拠を集める必要があります。
仮に、ドライブレコーダーの動画や防犯カメラ映像がある場合、その映像をみれば事故状況は明らかですから、調査の必要性はありません。しかし、これらが存在しなかった場合、どのような事故だったのかをはっきりさせることは難しくなってきます。
弁護士は、被害者の代わりに警察官が作成した実況見分調書や捜査報告書、信号サイクル、近くのコンビニの防犯カメラ映像等を取得することができ、これらを用いて事故状況を明らかにすることが可能です。
実況見分調書は、警察官が事故から比較的早い段階で現場の状況を調査し、当事者の認識した状況等を記録したものであり、ある程度客観性のある資料となります。
信号サイクルも、信号の色が争いになっている事案の場合、どちらが嘘の供述をしているのかを確かめるうえで重要な資料になってきます。
ある一つの事実(たとえば、加害者がウインカーを出していなかった、ショートカットして右折していた、青信号進入なのか、黄色信号進入なのか等)が明らかになるだけで、過失割合を大きく動かせる場合があります。
特に、交通事故によって重傷を負い、重い後遺障害が残存したような場合には、1割過失が変わるだけで何百万、何千万円と賠償金が変わってきます。
過失交渉を有利に進めるためには、弁護士に依頼することが有効といえます。
②型にはまらない案件に応じた交渉が可能に
保険会社の担当者から、「動いていたもの同士なので、あなたにも過失はでますよ。」と言われたことはありませんか?
これは、間違っていることがあります。
保険会社の担当者は、基本的に「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)を引用し、過失割合を主張します。
判例タイムズ38では、事故の類型(たとえば信号の有無、交差点内か否か、優先道路か否か等)、当事者の属性(自動車か、バイクか、歩行者か、自転車か等)が区別され、類型に応じた基本的な過失割合が記載されています。
この本は、裁判所でも利用されており、交通事故実務では必須なものとなっています。
たとえば、以下の図のように、路外に出るために右折する自動車と、対向直進してきたバイクの交通事故の場合、判例タイムズ38ではバイク側の過失を1割、自動車側の過失を9割と定めています。
日本全国では毎日のように交通事故が発生しており、千葉県でも多く交通事故が発生しています(令和元年の交通事故死亡者数は全国ワースト1位となりました)。そのすべての交通事故の過失割合を一から検討した場合、多くの時間がかかってしまい、迅速な訴訟手続きを図ることができなくなり、被害者の救済になりません。
その意味では、上記のような判例タイムズ38を使用することは有効です。
しかし、保険会社の担当者は、各事案の個別具体的な事情を考慮せず、単に各事故類型にあてはめて過失割合を主張するため、被害者側にとって納得いかない過失割合となることが多くあります。
上記の判例タイムズ38でも「実際に生じる事故は千差万別であるから、各基準(…略…)を画一的に適用するのではなく、事案により、その数値を増減して適用するという柔軟な態度が望まれる。」と記載されています。
したがって、具体的な事案によっては、動いている車両同士であっても、0:100の過失割合が認定されるべきケースは多々あります。
たとえば、千葉県の裁判所でも以下のような裁判例がありました。
千葉地裁平成22年5月28日判決
この事故は、千葉県千葉市で発生した自動車と原付バイクの事故で、上記の図面と同様の事故でした。この裁判では過失割合が争いになっていたのですが、裁判所は以下のように判断してバイク側の過失をゼロと判断しました。
「被告(自動車)において、路外の施設に入るべく対向車線を右折横断するについては、直進する対向車両の有無に厳に注意を払い、これを発見した場合には、進行を停止すべき注意義務を負っているといわなくてはならないところ、被告(自動車)は(…略…)原告車両(原付バイク)は前照灯を点けていたのにもかかわらず、前認定のとおり、原告車両と衝突するまで全くこれに気付かなかったというのであるから、その注意義務の懈怠は著しいものといわなくてはならない。」
「以上の諸点に加え、被告車両が本件事故直前に右折の合図をしたとは認められず、原告車両が原動機付自転車であり被告車両が貨物自動車であったことも勘案すると、本件は、被告の一方的過失により発生したものとするのが相当である。」
この事案では、自動車側の著しい前方不注視、右折合図がなかったことなどが考慮され、原付バイク:自動車=0:100の過失割合を認定しました。
このように、交渉段階から個別具体的な事情を考慮して、適切な過失割合を主張すべき場合は往々にしてあります。
交通事故に精通している弁護士に過失割合の調査、主張を依頼することで、過失割合が大きく変わることもよくあります。
保険会社から提示された過失割合に納得がいかなければ、交通事故に特化した弁護士に依頼することが有効です。
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