交通事故で接骨院・整骨院に通う際の注意点は?

交通事故の被害に遭い、首や腰、肩や膝などをケガした場合、整形外科などの医療機関で治療し、リハビリをしていくのが一般的です。

しかし、整形外科でのリハビリは、診療時間が限られていることや、アクセスが良くないことなどを理由として「通いにくい」と感じる方も多いでしょう。

そこで、夜遅くまで営業していることや、マッサージ、電気療法など整形外科では受けられない施術を受けられることなどから、整骨院や接骨院に通うことを検討している方もいるかもしれません。

しかし、整骨院や接骨院への通院が賠償金獲得にどのような影響を与えるのかをしっかり理解しないと、保険会社からの賠償金の提示をみてショックを受けることになりかねません。

今回は、交通事故で整骨院や接骨院に通う際の注意点を解説します。

この記事の監修者

弁護士 山田 洋斗

弁護士法人サリュ千葉事務所 所長弁護士
千葉県弁護士会所属
明治大学法科大学院卒業

【獲得した画期的判決】
・2021年8月 自保ジャーナル2091号114頁に掲載(交通事故事件)
・2022年 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻(赤い本)105頁に掲載
【交通事故解決件数】
1000件以上(2023年2月時点)

目次

整骨院や接骨院の通院で問題になりやすい点とは?

治療費が高額になり過ぎるケース

整骨院や接骨院にかかる治療費は、通常の整形外科でかかる治療費よりも高額になるケースが多くあります。

これは、整形外科でリハビリをする回数より、整骨院や接骨院にいく回数が多いことが理由です。

整骨院や接骨院での治療は整形外科におけるリハビリより「通いやすい」というメリットがあります。また、整骨院や接骨院での治療を受けると、痛みが軽減することがあります。

そのため、交通事故の被害者としては、整骨院や接骨院に出来るだけ多く通いたいと思うでしょう。

結果的に、事故に遭ってから完治するまでにかかった整骨院や接骨院の治療費は、整形外科における治療費よりも高額になります。

ここで注意しないといけない点は、交通事故で加害者が負う賠償義務は、あくまで必要かつ相当な治療費ということです。

整骨院や接骨院の治療費があまりに高額になると、保険会社は「過剰診療だ」などと主張し、その費用負担について問題となるケースが後を断ちません。

医師が診断していない部位の施術を受けてしまうケース

交通事故専門の弁護士が直面する整骨院や接骨院の治療費に関する問題として頻繁にあるのが、施術部位と整形外科における診断部位に齟齬がある場合です。

たとえば、整形外科では「頚椎捻挫」「腰椎捻挫」と診断されたものの、整骨院や接骨院では頚椎や腰椎以外に「右肩関節捻挫」などの診断名が追加され、右肩に関する施術が行われるなどの場合です。

保険会社は、基本的に整形外科における診断名を重要視しますので、整形外科でつけられた診断名と施術を受けた部位に齟齬がある場合、整骨院や接骨院における治療費を一部否定されてしまう可能性があります。

整骨院や接骨院に通う際に注意すべきこと

医師に、痛みのある部位について診断名をつけてもらい、診断名と一致した部位の施術を受ける

上記のとおり、医師がつけた診断名ではない部位について、整骨院や接骨院の施術を受けると、その治療費を否定される可能性が出てきます。

そのため、必ず痛みのある部位には医師に診断名をつけてもらいましょう。例えば、首、腰、右肩、右膝が痛ければ、頚椎捻挫、腰椎捻挫、右肩関節捻挫、右膝挫傷、などです。

整骨院や接骨院で施術を受ける場合には、これらの診断名と一致した部位について施術を受けるようにしましょう。

医師から整骨院通院について許諾、指示をもらう

整骨院や接骨院の治療費は、その治療の必要性や相当性が認められない限り、交通事故の損害賠償の対象にはなりません。

そして、特に治療の必要性があるかどうかは、医師の許諾や指示の有無が重要になってきます。

すなわち、医師が整骨院や接骨院への通院を許諾しているような場合、整骨院や接骨院の治療も交通事故の賠償として保険会社から支払われるということです。

医師の許諾は、必ずしも書面化する必要性はなく、口頭でも問題ありません。もっとも、医師が作成する診断書やカルテなどに「整骨院でのリハビリを許可した」などと記載されていると、証拠として残るのでより良いでしょう。

なお、医師の中には整骨院や接骨院への通院に消極的な医師もいます。そのような場合、明確な医師の許諾はもらいにくいかもしれません。もっとも、治療の必要性を否定されないようにするためには、最低限、医師が整骨院や接骨院の通院を把握している状態にはしておくべきです。たとえば、「リハビリは整骨院でも並行しておこなっている」などと記載されるだけでも、だいぶ保険会社や裁判所の印象は変わってきます。

整形外科にも並行して通う

仮に、整骨院や接骨院での通院をするとしても、並行して整形外科にも通院するべきです。

これは、被害者の身体のためであるのはもちろん、接骨院や整骨院の治療の必要性については前記のとおり、医師の許諾、指示が重要であり、整形外科との「つながり」は常に持っておく必要があるからです。

初診時のみ整形外科に行き、以降はすべて整骨院や接骨院の治療のみ、というのは危険です。医師の経過観察が行き届かない状態での治療は、後に治療の必要性や相当性を否定されてる可能性が出てきます。

そのため、仮に整骨院や接骨院にいくとしても、定期的に医師の診察をうけるようにしましょう。

毎日、長期間通うなど、行き過ぎに注意

整骨院や接骨院の治療費が交通事故の賠償の対象になるためには、その施術に一定の効果あることが重要です。

つまり、整骨院で施術を受けた結果、症状に改善傾向がみられたのであれば、その整骨院での施術は有効な治療であり、必要な治療費であると判断されるのです。

しかし、症状に変化がなく、通院頻度も長期にわたって変わらないという方が一定数います。

これでは、整骨院の治療が有効であったとは考えにくく、治療の必要性や相当性を否定されてしまう可能性が出てきます。

そのため、整骨院や接骨院に通う際には、長期間にわたる多数回の治療には注意し、もし、症状の改善傾向がみられない場合には整骨院や接骨院の治療を中止するなどの対応が必要な場合もあるでしょう。

保険会社(任意)の担当者が許諾していればOK?

被害者が任意保険会社の担当者に対して接骨院や整骨院に通いたい旨伝えると、多くの場合は許諾してくれます。これは、自賠責保険からの回収が見込まれるからです。つまり、任意保険会社は、接骨院や整骨院に治療費を支払うと、自賠責保険に対してその上限(120万円)に満までの治療費を回収しに行きます。自賠責保険は接骨院や整骨院の治療費ついては比較的寛容であるため、任意保険会社に対しても、すんなり払います。

しかし、自賠責保険の上限を超える治療費になった場合や、弁護士を介入させて弁護士基準の慰謝料を請求する場合、突如として接骨院や整骨院の治療費の必要性を否定してきます。一度は認めた接骨院や整骨院の治療費も、「賠償金の一部として支払ったに過ぎない」と述べ、治療の必要性を否定することはよくあります。

したがって、保険会社の担当者が接骨院や整骨院の治療費の支払いを許諾しているからといって安心するのではなく、医師の許諾、指示をしっかりともらうことが重要といえます。

整骨院や接骨院の治療費が問題なった千葉県の事例(千葉地裁平成元年8月28日判決)

千葉県千葉市で発生した交通事故で、被害者が10か月にわたり整骨院(柔道整復師)に通い、その治療費を請求した事案において、裁判所は整骨院の治療費について以下のように判断しました。この判決は、被害者にとっては厳しい判断といえるでしょう。

「当初医師が全治10日間との診断を下していること、…原告は、事故後1か月間は殆ど毎日のように柔道整復師の長時間かつ濃密な治療を受けたにもかかわらず、損傷部位は1部位として完治しなかったこと…医師の治療続行の指示等のない本件にあっては、本件事故から1か月以内の治療費(ただし、はり治療、マッサージは除く)、休業損害、慰謝料は本件事故と相当因果関係のある損害といえるが、1か月を超える治療及び休業損害等については本件事故との間に相当因果関係があることが未だ立証されているとは認められないと考えるのが相当と思料する」

まとめ

ここまで、整骨院や接骨院での治療が交通事故の損害賠償にどのような影響を与えるのかを説明してきました。

整骨院や接骨院での治療は効果が大きく、交通事故被害者の方にとって大きな味方になってくれます。また、施術してくれる柔道整復師さんの中には交通事故賠償に詳しい方も多く、身近な相談場所として、心強い存在といえるでしょう。

もっとも、保険会社や裁判所は、現状、整形外科に対する信頼の方が強く、整骨院や接骨院の治療内容、通院方法が適切とはいえない場合、十分な賠償を受けることができないケースが多くあります。

もし、整形外科での通院から整骨院や接骨院の通院に切り替えようとしている場合には、まずは交通事故専門の弁護士に相談するようにしましょう。

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この記事の監修者

弁護士 山田洋斗
弁護士法人サリュ千葉事務所所長弁護士。2015年から2020年まで交通事故発生件数全国最多の愛知県において多くの交通事故案件を扱い、これまで1000件以上(2023年2月時点)の交通事故案件を解決に導いてきた。2020年6月から地元の千葉県において千葉事務所所長弁護士に就任。日々、千葉県で交通事故被害に悩んでいる被害者の救済に尽力している。

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